「あの、ごめんね」
他愛もない話をしていて急に発せられた謝罪の言葉。「何で謝るんだ?」とディーノが聞くとはおずおずと持っていた紙袋からラッピングされた箱を取り出した
「あのね、昨日チョコレート作っててね、すごく失敗したの・・・もう時間も材料もなくて、何も渡せないのは嫌だからこれ、買ったんだけど・・」コンビニのチョコレートなの。という最後の言葉は消え入りそうなくらい小さかった。

「・・・」
「あ、ほんとに嫌だったらそれ捨ててもいいから!ほんとに!今度は失敗しないように作るし上手くいったの渡すから・・!!」

「・・すっげぇ嬉しい・・」
「・・え?」

ディーノはニッと笑ってそう言った。私が何か言おうとしたら急にぎゅって抱きしめられた。ちょっとびっくりしたけど背中に回された腕の体温が、きもちいい
がくれたものは何でも嬉しい、それがコンビニのチョコレートでも、な?」
そう耳元で囁くように言われてちゅ、と耳に口付けを落とされた。私の胸がどきんと高鳴って、前身が粟立つのを感じた。吐息が耳にかかって、それだけでもどきりとしてしまう。ディーノの唇は耳からほっぺたに、おでこに、目元に、そして最後に私のくちびるに。触れた唇が熱くて、だんだん深くなるキスは私をチョコレートみたいに溶かしてしまうんじゃないかと思うくらい。ちゅうっと上唇を吸われて離れた。見つめあう目は熱をもっているようだった
「今のの顔、すっげええろい」
「っ、ばか!」

照れ隠しみたいに私はディーノの背中に腕を回して胸に顔をうずめる。その私の頭をディーノは子どもにするみたいに撫でてくれて、私を安心させた。


名前を呼ばれて、うずめていた顔をだして、ディーノのことを見た。名前を呼んだ本人は優しく笑っていて、また「」と私の名前を呼んだ
私も対抗するように「ディーノ、あいしてる」と言った。そうしたらディーノも「俺も、のこと愛してるよ」って言ってくれた。

いつの間にかソファーに押し倒されて、ディーノが上に覆いかぶさるみたいになって、今度はさっきとは違う、貪るようなキスになって、上手く息もできないくらいなのにすごく嬉しくて、満たされたような気持ちになっていく

「なぁ、はくれねぇの?」
「・・え?」

「バレンタイン、が欲しいなあ、なんて」
きれいなハチミツ色の目が私をじっと離さなくて、何も言葉が出なくなって、でも身体の熱はだんだん上がっていくような気がした。

「何も言わないのは肯定って取るぜ?」
恥ずかしくて、うんってうまく言えなくて、ディーノにぎゅって抱きついてこたえた。


とろとろのチョコみたいに                   

 

 

               (チョコレートなんかより甘い夜を)110214*ちさと

 

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