遠距離恋愛ってつらい。日本とイタリアって遠すぎない?会いたいときに会えないのがこんなに辛いなんて。ディーノが最後に日本に来たのは5月2日、今日は6月20日。まだ5月の初めは少し寒くてカーディガンを羽織るくらいだったのにもう最近は30度を越す日もたまに。
もちろんメールだって、電話だって、してる。けど私は只の大学生で向こうはよくわかんないけどすごいマフィアのボスだったり。完全に住む世界が違うのになんで恋愛できたんだろうなってたまに思う。



会いたいよ、会っていっぱい抱きしめて、名前を呼んで欲しいの。そう思うたびに胸が締め付けられて苦しい。最近ディーノは忙しいらしくてあんまり電話も出来てない。電話で「会いたい」って言ったら「悪い、今ちょっと手が離せないんだ」ってすごい申し訳なさそうに言うディーノの声を聞くのが、頑張ってお仕事してるディーノのことを困らせるのが分かってるからそんなこと言えない。


私が少し髪色を変えたり、ちょっとだけ体重が減ってズボンのウエストが緩くなったり、近所の猫ちゃんがママになったり、些細なことだけどいろいろあったその些細なこと一つ一つだってディーノに伝えたいと思っているのに実際は殆ど話せていない。
頭の中がぐるぐるして、胸が苦しくて、涙がこぼれてきて、この涙を拭うのは彼の指じゃなくて私のかさついた指で。

まだ淹れてそんなに時間が経っていないと思って口にしたコーヒーは思っていた以上に冷めていて、余計に切なくなった


今日は梅雨寒で4月下旬くらいの気温だってテレビで言ってた。バイトはお休み、どこかに出掛ける予定もないしこの雨じゃ出掛ける気分にもならない。この前借りた小説の続きを読もうとしたときにインターフォンが鳴った。誰だろう、パジャマじゃないとはいえあんまり人と会うような格好ではないから面倒くさいな・・・「はーい、どなたですか?」締めてあった鍵とチェーン外してドアを開けるとそこには久々に見るディーノが、いた

「え、あれ・・夢?」


思わずそんなことを言った私の顔を見てディーノは軽く笑いながら「夢なんかじゃないって、 、ただいま」って言った
「・・・おか、えりなさい・・」
「まだ夢見てるような顔してる」

ディーノは私の頭を撫でながら「髪染めたんだな、似合ってる」って言った。「そうだよ」ってつぶやこうとしたはずなのに言葉が出なくて、会ったらいっぱい話したいことがあったはずなのに頭の中が真っ白になって上手く話せない。言葉の代わりに出てきたのは涙だった。ぽろりと涙が一粒流れ落ちて、私はいつの間にかディーノの背中に腕を回して抱きついていた。



「ディーノ、ディーノ・・・」
何回も何回も名前を呼んで、ぽろぽろ涙を流してる私をディーノは優しく抱きしめてくれた。


「なかなか連絡できなくてごめんな」

「すげえ会いたかった」

泣いている私の顔を両手でやわらかく包み込んで、目元にキスをひとつ。
「俺の腕の中で泣いてるの顔も可愛いけどやっぱり笑った顔のが好きだな」
笑ってくれねえの?ってつけたしされる。私はディーノのことを見てゆっくりと笑った。


「ディーノ、会いたかったよ、好き、大好き、おかえりなさい」って言った。言いたい事がいっぱいあって思考回路はめちゃめちゃで変な言葉になった。そのときの私の顔は多分、ひどい顔だったと思う。すっぴんだし、涙でぐちゃぐちゃだし。

おでこに、目元に、頬に、唇に、首筋に、胸元に、いっぱいキスされた。ディーノの唇が離れたときにはもう涙は止まっていた。


涙を拭うのは


(110618 人の事を想って流す涙ほど切なくて苦しいものはないの)

 

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