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小さい頃、ママに絵本を読んでもらう時間が大好きだった。私が7歳のある日、いつもみたいにママに絵本を読んでもらった。 その日はディーノくんが私の家に遊びに来ていてディーノくんも一緒にママのお話を聞いていた。

「・・・女の子は一生幸せに暮らしました。おわり」
絵本の内容は、小さな女の子が見つけるとなんでも願いが叶うという四つ葉を探して冒険する、というお話だった。 読み終わるとママは冷えたオレンジジュースを私達に出してくれた。それを飲みながらディーノくんとお話をする。

「女の子は幸せになれてよかったね!」
「ねぇ!」
「なぁに?」

「僕達も四つ葉探しに行こうよ!」
「え?」


ディーノくんはきらきらした目で絵本を開いて四つ葉を見つけたときのページを指差しながら言った。 私はちょっとだけ考えて「うん!行きたい!」と答えた。
ママは「あんまり遠くへ行っちゃだめよ?それと夕方にはちゃんと帰ってきてね。ディーノくん、をよろしくね」とにこっと笑って言った。 ディーノくんは「まかせてください!」って自信ありげに胸を叩きながら言うと私の手を取って外へ連れ出した。お気に入りの帽子をかぶって、靴を履いた。
あ、オレンジジュース残しちゃった・・


外は陽射しがたくさん降り注いでいて、ちょっとだけ風があって気持ちよかった。ディーノくんはどこに四つ葉があるのか知ってるのかなあ、なんて ことを思いながら手を繋ぎながら路地を歩く。
「裏山にいっぱいクローバーがあるんだ!きっとそこなら四つ葉もみつかるよ!」「うん!」
少し歩いて、丘を登ったところで「ここだよ!」とディーノくんが言った。ざあっとあったかい風が私の髪の毛とワンピースをなでた。 そこはクローバーの絨毯のようだった。クローバーの緑とシロツメクサの白がまざって、太陽の光に反射してきらきらひかる。 風がクローバーを揺らして波のようにさざめいていた。

「すごーい!こんなところあったんだね!」
「よーし、僕はこっち探すから、はあっちお願いな!」
「うん!がんばるね!」


探し始めて1時間くらい経った頃、太陽が沈みかけて真っ赤なりんごみたいに赤みを帯びてふくらんできた。目当てのものは見つからない。 そう簡単に見つからないから見つけたらなんでも願いが叶うといわれているのだ、わかっていたけど、こんなにいっぱいあるんだもの、もうちょっと簡単に見つかると思っていた。
「うーん・・ないなあ」
探すのにも飽きてきて、ディーノくんのところに行こうと私は立ち上がった、その瞬間に風がざあっと吹いて、その拍子に被っていた帽子がふわっと飛んでいく。 「あっ!」 まって!帽子を掴もうとした手は帽子に触れるか触れないのところで掠めた。紙飛行機みたいにひゅるひゅると飛んでいく帽子を必死に、追いかけた。 息がきれて、どんどん帽子との距離が離れてく。ついに、見失ってしまった。

涙がでてきて、ぺたんと私はしゃがみこんでしまった。「ひっ、く、う・・あ、れ・・」 帽子を追いかけて、無我夢中に走っていた私は広い緑と白の絨毯にぽつんと座っていた。ディーノくんが、いない。 りんごみたいな太陽がどんどん沈んできて辺りがオレンジ色から薄いグレーに染まっていく。四つ葉は見つからないし、帽子は飛ばされてしまう、そのうえディーノくんともはぐれてしまった。

「ふえっ、でぃー、のくん・・っひく」
風の音がやたらと怖く感じて、私は耳を塞ごうとしたときだった。「おーい!ー!?」聞きなれた声がする、ディーノくん・・? 私は立ち上がって声のするほうに歩き始める。涙は、止まっていた

!!」
「ディーノくん!!」

やっと会えた、会っていない時間は少しだけのはずなのにとても長く会っていないような気がした。 ディーノくんはTシャツとかズボンとか、ほっぺたにまで泥がついていた。「途中で転んじゃったんだ、は、大丈夫?平気?けがとか、してない?」と 言って私を見た。「けがはしてないよ・・けど、帽子・・飛んでいっちゃったの・・」また涙が出てきて、最後のほうはうまくいえなくて、 ディーノくんは「そっか、僕がその場にいれば・・ごめんね。」と申し訳なさそうに言って何かを思い出したように「あっ、そうだ!」と明るく言った。

ズボンのポケットから何かを取り出して、それを私に見せる。緑色の、葉っぱが4つ重なったそれは私たちがずっと探していたものだった。
「あっちで見つけたんだ!ちょうど二つ!」「うわあ・・!すごいね!私も頑張って探したんだけど・・」「、手かして?」「手?」

クローバーの絨毯にぺたんと私たちは座りこんで私は手をディーノくんの前に差し出した。「こっちじゃなくて、左手!」「・・うん?」 ディーノくんは持ってたハンカチで私の手に付いている泥をぬぐって薬指に四つ葉の茎をくるりと巻いて、一回きゅっとしばった。
「帽子のかわりにはならないかもしれないけど・・きっとこの四つ葉がを幸せにしてくれるよ!」
「うわあ・・ありがとう!四つ葉の指輪だね・・!あ、ねえねえもう一つの四つ葉、ちょっと貸して?」渡された四つ葉をさっきディーノくんがしてくれたみたいに 指輪みたいに指にくるっと巻きつけた。
「これでお揃いだね!?」「・・・そうだね!」

仲良く手を繋ぎながら歩く。風で飛んでいった帽子も見つかり、四つ葉のおかげだね、と二人で顔を見合わせて笑った。


お揃いの指輪

( 四つの葉っぱに願いを ) 120308 ちさと