体がどろどろにとけてしまうんじゃないかと思うくらい愛されて気を失うように眠りについた昨夜、私は隣ですやすやと寝ているディーノよりも早く目を覚ました。
昨日はお風呂に入らないまま寝てしまった。本当なら昨日私は友人から貰ったバブルバーを使ってゆっくり泡風呂に浸かっている予定だったのに。
むくりとベッドから起き上がって、そこらじゅうに脱ぎ散らかした衣服を拾い上げた。
暖房が効いていて、布団をかぶっているとはいえこの季節に裸で寝るのはまずかったかもしれない。「さむ・・」ふるりと震えて、私は昨日着ていたロングパーカーを羽織って
お風呂場に向かった。
EAT ME!と称されたバブルバー。カップケーキの形をしたそれを湯船に落として、蛇口をひねった。しゅわしゅわと溶けていって、お風呂場いっぱいにキャラメルとクッキーみたいな甘い匂いが広がる。
お湯の温度を確かめながらくるくるとかき混ぜるとふわふわもこもこの泡が出来た。
そろそろディーノも起きてくるかな、私が一人でお風呂入ってるのを見たら絶対に入ってくるんだろうなあ。と思って湯船に浸かる。私の家のお風呂はディーノのおうちみたいに広くないのだ、
一人ならゆっくり入れるけども二人となるとそうはいかない。いつも二人でお風呂に入る時は後ろからディーノに抱きしめられる。他愛もないことをずっと話して、
つい長湯をしてしまうこともしばしば。そうやってお風呂上がりに冷えたお水を飲みながらまた私たちはキスをしたり笑ったりしてるのだ。
ぺたぺたと素足で歩く音が聞こえて、扉越しに「?」と声をかけられた。
浮かんでいる泡を両手ですくいとって息を吹きかけながら、んー。と曖昧な返事をひとつ。「俺も入っていい?」やっぱり、と思いながら「うん、いいよ」と答えて私は笑った。
いつもどおりちょっと窮屈な湯船に二人で入って、いつもみたいに後ろからぎゅうって抱きしめられた。思い出したようにディーノが「おはよう、」って言って首筋にキスを落とす。
くすぐったいその口付けに私は身じろぎして幸せを噛み締めた。
ディーノが入ってくる前に私は既にお風呂に入っていたわけで、もう少ししたら私出るよ?と振り向いてディーノに伝えると「・・まだ、もうちょっとな」と艶っぽい声で言われて、
不覚にも耳元で囁かれたその声にきゅんとした。ずるい、ディーノはやさしくてずるい。結局私はその甘い声に流されてしまう。
そのとき私のお腹に回された腕がいやらしく滑るのを感じた。くるくるとお腹を滑るその手が胸を触りはじめたあたりで「朝から、や、あ」と聞こえるか聞こえないかの声でつぶやいた。
「EAT ME、って」
「・・え?」
「入浴剤のパッケージに書いてあったから、食べて欲しいってことなのかなーって思って」
あぁ、そういえばそんな名前のバブルバーだったなあ、湯船にバブルバーを入れたのがひどく前のことに感じられて、ぼんやりどんな形だったかなんて
思い出してみる。たしか、カップケーキみたいな、そんな。ディーノの舌が飴を舐めるみたいに私の首筋を、肩を、背中を舐めるから何も考えられなくなってしまう。
熱いため息と小さな喘ぎ声がお風呂場に広がる。お風呂場でするのは初めてではないけどあまり好きじゃないのに、甘い声を出すのは主に私だから、私の声ばっかり響いてしまう。
その声を聞いてディーノはいつも満足そうに笑って「気持ちいい?」と声をかけるのだった。
さんざん触れられたそこはとろとろにとろけていて、ディーノの長細い2本目の指を受け入れているところだった。
もう片方の手は胸だったり鎖骨だったりをなぞっている。たまに耳元で名前を呼ばれたり息を吹きかけられたりするものだから
私はもうどうしようもなくて甘い声を出したりディーノの名前を呼ぶくらいしかできなくなっていた。
「、後ろむいて、縁に手ついて、」
「・・え、うし、ろ、」
後ろはいや、と言う前に後ろを向いている私の腰を掴んで、ざばりと、自分ごと立ち上がらせてしまった。ぽたぽたと落ちるお湯の音がやけに耳につく。
指先で背中のカーブをなぞられて、口付けを落とされる。私が背中が弱いのをディーノは知ってる。私の弱いところはぜんぶぜんぶ、どこがいいとかそんなこと言ってないのに
勝手にさぐられて、ただ私は感じることしかできなくて。腰がぬけたみたいにお風呂の縁に手をついた私を見て彼は「可愛い」と言うのだった。
何回か入口をぐちぐちと擦って、中を押し広げるみたいに入ってくる。嫌だとかそういうのじゃなくて、生理的に逃げたくなって、体を前にずらそうとすると
それを見逃さないディーノが私の腰を掴んで余計奥に引きずり込んでしまった。ぐちゅぐちゅといろんなものが混ざって、何回も泡みたいにはじけた。
目の前が白と黒を行ったり来たりしてちかちかする、私のだらしない声とディーノの切なそうな声とが混じってお風呂場に響く、「っひあっう、も、む、りぃ」
あっけなく達してしまった私を追いかけるようにディーノも達した。
「もう、朝から、さいあく」
「なんだかんだも乗り気だっただろ?」
「うー・・」
お風呂場を出た私たちはすっかりふやけた指先で冷たい水の入ったグラスを持ちながらそう話していた。
事が終わったあとに湯船を見るとせっかくの泡が半分以下に減ってしまって、ほんの少しの泡がぷかぷかと水面に張り付くように浮いているだけだった。
はあ、とため息をついた私を見てディーノは「まあ、また今度泡風呂、やろうぜ」と頭を掻きながら言った。もう絶対、ディーノと一緒に泡風呂なんてやるもんか、今度は一人でやるんだ、と
決心した。
|121228 ちさと |
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