今日の目覚めほど最悪なものはなかったかもしれない。窓からはこれでもか、というほど朝日が降り注いでいる。 重たい瞼を開けてごくんと唾を飲み込んだら喉がすごく痛い。鼻もつまっているみたい。身体を起こすとくらついて、再度ベッドに身体を委ねた おでこに手を当ててみる。熱はなさそう。今日はテスト前の大事な授業がある日だ、寝てなんていられない。 だるい体にむち打って起き上がり、身支度を始めた。 いつも以上にゆっくりと支度をしていたからかルームメイトは先に大広間に行ってしまい、朝食すら食べる時間もなさそうだ。まあお腹空いていないからいいんだけど・・ 昨日友人に貰ったオレンジジュースを一口飲んで授業に向かった。 最悪なのは目覚めだけではなかったらしい。 教師が出張らしく急な授業変更があり、古代ルーン文字学は心底どうでもいい占い学になってしまった。教室は温室並にむわりとしていてあつい。 それに香水と紅茶のにおいが相まって居るだけで気分が悪くなる。 適当に授業を受けていたら教師につかまり、授業が終わった後に後片付けをさせられた。おかげで次の授業に遅れてしまいそうだ。 次の授業は、魔法薬学。 「すみません!遅れました!」 重い扉を開いて謝罪の言葉を言う。その声は静かな教室に反響してみんなの視線が一気にわたしに集まった 「グリフィンドール5点減点だ。弁解だけはさせてやろう。何故遅れた?」 「すみません・・前の授業の後片付けをさせられて・・」 「させられた?それは自分には非がないと思ってのことかね?」 「すみません・・」 謝りながら席に着いた。一番前しか空いてなくてそこに座るほかなかった。相変わらず体はだるい。 作業中にも失態をしてしまった。ふらついて、本来後にいれるものを先に入れてしまったのだ。案の定薬を嫌なにおいを発散させてもくもく煙もあがっている 「授業が終わったら残りなさい。」 はあ、とため息をついたのと終業のベルが鳴ったのはほぼ同時だった 「馬鹿もここまでいくと才能だな」 「今日はすみませんでした・・罰則だったら受けます」 「そうではない」 そういって大きな手が私の額に当てられた。セブの手がいつも以上に冷たく感じる。 「38度3分というところだな」 「へ・・?」 「自分の体調もわからないのかね」 ぐい、と手を掴まれて教室を出た。掴まれた手はすぐに離れてしまったのが残念。だけどいつもより歩くのが少しゆっくりで、 歩幅も少し狭いのは私に合わせてくれているんだとプラスに考えてみた。 広い背中を追いかける。向かっているのはたぶんセブの自室なんじゃないかなあと思う。あ、当たり。部屋に入るといつもの薬草のにおいがしなかった。 ああ、私鼻つまってるんだった。奥にある寝室につれていかれた。え、なにごと? 「今日はここで寝ていたまえ」 「え・・?」 「そのような身体のまま授業を受けてもまともに黒板さえ写せないであろう。今日は休め。そのうち薬を作って持ってきてやる」 「えぇ・・・?やだよ、セブの作る薬、絶対・・苦いもん・・・」 「その身体で何をいう。良薬口に苦しというだろう」 「そう、だけ・・ど・・」 「はぁ・・今は寝ていなさい。」 溜息をひとつ。そのあとに頭を撫でられた。セブになでなでされるとどうも眠くなってしまうのだ。新手の魔法? 「う・・・ん・・」 何度か瞬きをして、重くなってきた瞼をゆっくり閉じた。私の頭を撫でるセブの手の感触が気持ちよくて、いつのまにか私の意識は落ちていたのだ。 かぜっぴきなおひめさま 「っん・・ぷはっ・・にがああっ・・・・」「これくらい大して苦くないだろう。」「く、口の中が大変・・・」 110101*ちさと |