「・・・ここ、どこ・・・」気がついたら私は真っ暗な闇の中に一人ぽつんと立っていた。場所も、時間も分からない。
手探りで自分のローブのポケットに手を突っ込む、ありがたいことに杖が入っていた。
杖先に灯りを点して、私は歩き出した。何もない暗い道を10分くらいはあるいただろうか、そこに人影が見えた。
その人はしゃがんでいるらしく顔は見えない。話を聞こうと近づいていくと、小さな嗚咽が聞こえてきた
「っく、ひっ、く・・」
(泣いてる・・・?)
声色からしてその人は自分とさして変わらないくらいの女の子であることがわかる。
「ねぇ、」そう声をかける。
何で泣いてるの?ここはどこ?と声をかけてみた、しかしその少女は全く聞く耳を持たずただ泣き続けている。
「っや・・・ひっ、く・・せ、ぶ・・・」
少女の嗚咽の中、愛しい人の名前が含まれていることに気づいた。(セブ・・・?)少女のほうに杖の灯りを向ける。少女の見つめる先には誰かが、横たわっている
いつの間にか杖を握る手にはじっとりと汗をかいていた、ゆっくりと視線を体から顔に向ける。
「せ、ぶ・・・」
ぽつんと私がその名前を呼ぶと泣いている少女がぴくんと反応して、こちらを見た。「・・・え・・?」
少女と目が合った途端、姿くらましをするときのような、感覚に襲われた。
体がひっぱられて、ねじられながらぐるぐると回る、肺が押しつぶされて、息ができない。思わず手を伸ばして誰かに助けを求める。もうだめだ、と思ったときにぱちりと目が冷めた
「あ、れ・・・・」目の前に広がったのはいつも見ている寮の寝室の天井だった。夢だったのだ。
ごろんと寝返りを打ってサイドボードにある時計を見ると12時を少し回ったところだった。隣を見るとルームメイトがすやすやと寝息を立てている。
寝巻きの上にガウンを羽織って、部屋を出て談話室へと向かう。もちろんそこには誰もおらずがらんとしていた。
肖像画の穴をくぐる。マダムは眠っているようで絵の中にいなかった。
その足は、地下室へと向かう。途中でピーブズと出会って大きな声をあげられたり、
見回りをしているだろう教員に見つかったりしたらどうしようと思ったりもしたが足を止めることはなかった。どうしようもなく、彼に会いたいのだ。
地下室の、彼の部屋の前に立つ。走ってきたわけでもないのに鼓動が早い、ドアを2回叩いて、少しの間待つと「開いている」と返事が聞こえた。
セブはレポートの採点でもしているらしく机の上には束になった羊皮紙が重ねてあり、それに目を通しながら羊皮紙にインクを走らせている。
は机の近くにあった椅子に腰掛けて名前を呼んだ。
「セブ・・・」
「こんな夜中に、そんなに罰則を受けたいのかね?」セブルスはペンを運ぶ手を止めずにそう言った。
「別に・・・罰則くらいならいいよ、ただ」「ただ?」「セブに、会いたくなったの」
部屋に数秒の沈黙が流れ、セブルスのため息が一つこぼれた。
インク瓶を蓋を閉め、杖を一振りして羊皮紙をまとめて、机周りを片付ける。「来なさい」そういわれてセブルスに手を引かれた。
「夢を、見たの」「どんな夢だね」「あのね、真っ暗で、何にも見えなくて、誰かが・・泣いてて、」「ほう」
「・・多分泣いてたのは私だった気がするの。それでね、セブがね・・」
ベッドの中でぎゅってしてもらいながら話す。いつの間にか涙が流れてて最後の言葉の続きは言えなくなってしまった。
私の頭を優しく撫でる彼の手があたたかくて、眠気を誘ってくる。
「それで不安になって私のところに来たと?こんな夜中に」「う、ん・・」
軽くあきれたその声ですら私を安心させる。「せ、ぶ・・・」もう瞼は殆ど閉じかけていて、舌も上手くまわらない。「だい、すき・・ずっと・・あい、して・・る・・」
やっと呟いた愛の言葉も小さくて、今にも消えそうなくらいか細い声だった。セブルスが「我輩も愛している」って声を聞いて、唇が触れて、離れたところで私の意識はなくなった
夢をみる
(幸せな夢が見れますように)110812ちさと